知らないアーティスト(の音源)へアクセスするにあたって、どのような手段を使うだろうか。自分としては専ら Bandcamp や Spotify でジャンルやタグなどに紐付くワードから適当に掘るのが主になっているのですが、リスナーであるのと同時にプレイヤーでもあるわけで、そういった切り口(具体的には、楽器の演奏動画や紹介動画)から探していくというのもやってる感じです。

とはいえ、プレイヤー的観点から導かれる作品が割と技巧的なものに偏りがち(アートとエンターテインメント、ファインアートとコマーシャルアート、あとはアーティストとミュージシャンの違い的なレイヤーの話なんだろうけども今回は割愛)という傾向も薄っすらと感じていて、要は演奏上手いのにあまり魅力を感じない系に多く出くわす、と書けば伝わるかもしれない。

そんな中ここ2年くらいフォローしているギタリストとして、自分と同じ種類の楽器(Fender Jazzmaster)を上手く活用し、ミュージシャンとしてレコーディングに参加する傍らで自分の作品を発表するアーティストとしても活動中の Michael Lemmo が最高なので、日本国内での言及に乏しく情報が少ない現状に対して紹介していきます。


Michael Lemmo について

オーディエンスの前でギターを演奏するLemmo

Michael Lemmo は LA を中心に活動するミュージシャン。かの Berklee College of Music を出身としていることもあってか音楽的にアカデミックな素養のあるタイプの人で、同門の John Mayer のように、日本国内でも有名な同校時代の恩師とのセッション風景の動画などもYouTubeで見られる。

Normans Rare Guitars の楽器を紹介する映像での演奏も担当していて、ここで目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。

プレイヤーとしては Eddie Van Halen に大きく影響を受けているほか、Jimi Hendrix や Stevie Ray Vaughan などのスタイルも自然に自信の演奏へ取り込んでいる。一方でアーティストとしては Jeff Buckley や Radiohead などに影響を受けており、リリースしているソロ名義での作品ではそういった要素の発露がソングライティングやアレンジ面で見受けられる。

特に、2020年7月時点で唯一のアルバムとしてリリースされている「Demo」は、タイトルと裏腹にエレキギター中心のアレンジが洗練された作風で、彼の音楽的背景が存分に盛り込まれた作品に仕上がっている。
後述する彼のトレードマーク的な Fender Jazzmaster の魅力を生かした演奏が聞けるアルバムで、特に Behind the Bridge や 3rd Bridge などと呼ばれる JG・JM特有のテールピース〜ブリッジ間を演奏するノイズ手法と、Van Halen のようなリフが同居した作品は他になかなか見かけない。自分も Van Halen や AC/DC などのハードロックと80年代以降のインディーロックを同列に好む人間として、こういった作風に出会えたのはかなり幸運だった。ので、同種の音楽やギターを好む人は欠かさずチェックしてみてください。

ちなみに彼の YouTube チャンネルでは MV や一部のライブ映像が公開されている。


Gear

彼が “Godzilla” と呼ぶ Fender American Vintage ‘62 Jazzmaster は、印象的な黒いピックガードによって黒一色となった上にラフなステッカーボムやペイント、そして Mastery Bridge への換装が施された形になっていて、現在 Jazzmaster という楽器のイメージとして広く共有されるような種の音楽性に留まらない雑多な雰囲気を出してる気がする。

(最近、緑のアノダイズドピックガードに変えたり、ブリッジPUをカバードのハムバッカーにしたりとかなり更新されていて、JMのシングルPUのブリッジポジションが好きな自分としては若干残念なんだけど、これはこれでキメラ感が増しておもろいな、などと思ってます)

Lemmo はこのギターにおいてブリッジPUとネックPUをまんべんなく使い分けていて、現在日本国内で主流になっている感のあるネックPUやミックスでの弦のジャリジャリした質感を前面に出したスタイルではなく、JMで当初想定されていたと思われるまろやかで粘りのある音質が彼の作品では聴ける。

特にブリッジPUでの太くていなたい音質は昨今なかなか聴けないタイプのサウンドだと思ってて(長らく市場を席巻した Fender Japan 製のJMに搭載されたハリボテPUなどの影響でJMのブリッジPUが正当な評価を得られていないのが原因な気も)、彼のハードロック方面への嗜好の現れだと思うのですが、そういった領域の演奏に対してあまり縁の無さそうなJMで取り組んでいく感じがすごくいい。何なら親近感も湧く。

アンプは 4input の Marshall をメインに使用している様子で、エフェクター類に関しては一通りのスタジオワークに対応できるような汎用性の高いものを揃えている光景が動画で確認できる。


Jazzmaster でオルタナの音、といった価値観が今でも維持されているのは見ていてなかなか厳しく(こう書くしかないこと自体が既に周回遅れでつらい)、所与の事物からなる傾向をそのまま Alternative と無邪気に呼べる音楽家とどのようにコミュニケーションするかについては未だに良い方法が自分の中で見つかっていないのですが、Lemmo のようにただ自分が良いと感じた音楽をリスナー視点・プレイヤー視点を交えて自然に取り込んだ結果、ユニークなキメラ感(彼の愛機同様に)を印象付ける表現に至ったアーティストを知ることができたのは個人的にとてもありがたい。

ちなみに Lemmo の活動や情報を追いたい場合は彼の Instagram アカウントをフォローするのが良い。日々のちょっとした演奏の動画がアップされている。また、記事のはじめの方で触れた Normans Rare Guitars の YouTube チャンネルでも、定期的に彼の演奏による絶品なヴィンテージギター(現行ギターも少々あり)のトーンとキッズ感のある選曲が楽しめる。

サムネイルの時点で最高な動画だとわかる