ここ2年ほど Kensei Ogata から半永久的に借りている Fender Telecaster Custom(画像)を主に演奏していて、なかなか気に入っていたけれど、自分の趣味や他の楽器との兼ね合いでハムバッカータイプのピックアップに換装した。
(音の数が多いポップスやモダンなギターロックでは分離の良さと音作りの容易さを買われて良く採用されている印象のシングルコイルに関しては、自分の好みな Beatles やそのフォロワーがやるような作風ではあまり馴染みの良くない音なので今回は諦めた)
Telecaster Custom はデフォルトでネックPUに Fender Wide Range Humbucker (以下WRHBと表記)を採用しているので、今回はブリッジPUのみの変更。
ネック/ブリッジPU両方ともWRHBになったので実質 Telecaster Deluxe へコンバージョンした感じになっている。そういえば Thom Yorke もサンバーストの Telecaster Custom に同様の改造を施して使っていた(plankarchiveに記載されている)。
作業内容
実際に作業をお願いしたのは仙川で「工房path」を営む石川さん。
楽器・機材への知識とプレイヤー目線を兼ね備えた施工の提案をしていただき、以前から Kensei Ogata バンドのギターはリペア・改造問わず度々お世話になってます。
とりわけ Fender Jaguar / Jazzmaster などのオフセットギターの依頼が多く、知見も深まっているとの事だったので、自分のギターの状態に疑問を抱えている人は相談すると良いかもしれない。
今回の作業内容としては、
- ボディのザグリ
- PU配線
- POT変更
- ピックガード加工
などお願いして、良い塩梅に調整してもらいました。
ブリッジ
Telecaster Custom は一般的なテレキャスター型のブリッジPUを採用しているため、ハムバッカー改造に当たってはブリッジも変える必要がある。
母体の Telecaster Custom はメキシコ製なのだが、弦間ピッチが10.8mmで、調べてみるとこの規格の互換ブリッジが少なく、更に今回はハムバッカーへの換装なのでハードテイルタイプに限定して探す必要があり、なかなか厄介だった。
結論としては、
を購入して問題なく使えている。
relic と表記されているものの、そこまでやつれた感じでもなく、今回のギターには馴染む印象だったので満足している。
ピックガード
石川さん曰く、ピックガードは新規に製作するより既存の製品を買っ方が安上がりとのこと。Telecaster Deluxe のピックガードを適当に探し、先のブリッジと同じ海外通販にて購入した(が、後述する詰まりポイントがあってすんなりとはいかなかった)。
ピックアップ
WRHB の互換品は一般的なハムバッカー互換のタイプと比べて少なく、少ないのだが、最近では国外のメーカーや個人工房が製作しているのをちらほら見かけるのでそこから選択する事ができる。 (ちょっと前まではFender本家を除くと RetroTonePickups か Lollar ぐらいしか扱っていなかった記憶がある…)
今回購入した Creamery Pickups はマンチェスターの個人工房で、手巻きのピックアップを製作している。
自分が選択したのは70年代のオリジナルを再現した最もオーセンティックな Classic ’71 というモデルで、これ以外にもWRHBサイズのPAFなどがラインナップされている。
また、近年の復刻モデルに搭載されているWRHBをオリジナルと同様のものへアップグレードするサービスも展開している様だ。復刻のものとオリジナルの差異に関しては Creamery Pickups のブログに詳しい。
Fenderロゴの刻印が印象的なWRHBだけど、Classic ’71 もちゃんと Creamery Pickups のロゴが印字されていて、見栄えが良い。2〜3週間程度で到着した。
ネック形状の違い
Telecaster Deluxe は Stratocaster のラージヘッドネックを流用した関係で、一般的なTelecasterネックを採用した Telecaster Custom とはボディ接合部の形状が微妙に違う。(出典: http://www.guitarhq.com/fender.html)
自分の場合は Telecaster Deluxe 用のピックガードを購入したのだが、ネックポケット部分だけTelecasterネックの形に修正しないと干渉するため、ピックガードも加工してもらう流れとなった。
印象
エレキギターのPUはネック側に近づくほど巻弦の質感がそのまま表出するけれど、改造前のPU構成ではネックPUやミックスポジションでシングルコイルらしい巻弦の鳴り方が仰々しくて苦手だった。そういった背景から(他のギターでも)PUポジションは主にブリッジPUを選択して演奏している。
改造後はブリッジPU単体でハムバッカーの音、ミックスポジションでブリッジ全開・ネック70〜80%くらいだと少しシングルコイル感の混じったハムバッカー、ミックスポジションでネック・ブリッジ両側とも全開だとシングルコイル感強めな感じに聞こえる。
ミックスポジション選択時のネックPU側Volの開閉具合で上記の音色を行き来できるので、ギター1本持ち込んで何曲か演奏するライブ用途には便利で良かった。
Creamery Pickups 自体の出来も良い。
復刻WRHBの曇った印象とは異なり、70年代のオリジナルに近い構造で感度が高く、比較的クリアに演奏を出力してくれる。
今回はブリッジ側だけ注文したのだけど、セットで購入しておけば良かった。
追記
2020年7月:
73年製のTelecaster Deluxe入手にともない、持ち主に返却しました。