2~3年前に見つけてから自分の中での理想のミュージシャン像が更新されなくなった原因であるところの Greg Pope に関して、今までは好き過ぎて誰にも教えないスタンスをとっていたのですが、今回その素晴らしさを共有したい感情が勝ってしまったため、ざっくりと当ブログで紹介します。

Greg Pope とは

Greg Pope はナッシュビルで映像制作に携わっているおっさんで、ミュージシャンとしても活動している。YoutubeチャンネルVimeo には彼の手掛けた映像案件や個人制作の作品が公開されているほか、SSWとしても10枚近い作品をリリースし現在も活動中。

最新作「A Few Seconds of Fame」のティザー映像

とりわけ特撮が好みらしく、STAR WARS のファン制作の映像部門で最終選考まで到達した作品などもアップロードされている。


音楽性

一応、パワーポップ関連の部門でピックアップされているのをよく見かけるため括りとしてはそこに属するようだ(国内での言及もほぼ THISTIME ONLINE STORE および POWERPOP ACADEMY 辺りでしか観測できなかった)。

「The Pope of Power Pop」との肩書が用いられているようだが、知名度やYoutubeチャンネルの数字を見るに、あまり良い評価が得られているようには見えない。これに関しては、USインディー的な一見地味で装飾や迫力を前面に出さないサウンド面がパワーポップの範疇としては良いマッチングを得られていないのでは…と邪推している。

ソングライティング自体は Guided by Voices や The Replacements, Alex Chilton, TFC などに近い、ストレートで親しみやすい和音とメロディーを聴かせるタイプで、特に多用される半音進行+粒の粗いディストーションギターのニュアンスは Mark Linkous (Sparklehorse) を想起させる率直な気持ちよさがある。

一方で Elliott Smith のような和音・編曲のセンスや、要所でオルガン等の鍵盤楽器を用いる60, 70s Rock 的なアレンジも自分好みで、パワーポップというよりは所謂USインディー / カレッジ・ロック / ロックンロール・リバイバルの良いとこ取りな中間点として売り込んだ方がコンバージョンするのでは…とお節介にも思わされてしまう。

ライブでのバックバンドは Greg の息子の Asher Pope 君がベース(構成に応じてギター、鍵盤も)を担当しており、他にドラムのメンバーなども合わせて大体3〜4ピース構成で活動しているようだ。親子でバンド、それも完全に父親の趣味っぽい Dad Rock 影響下のポップソングを息子もノリノリで演奏している光景は Youtube にアップされていて、見ていると強制的に笑顔にされます。

本職が映像畑の人なので、彼のYoutubeチャンネルではこのような良い感じに編集されたライブ映像の断片が見られる。
ツッコミどころ多数な Queen のカバー(メドレー)は中毒性高めで、再生数の大半を私が視聴しています。他に Cheap Trick や Genesis の曲も演奏していて、例外なく最高。

以下、2018年10月時点での Greg Pope 名義でのリリース一覧なんですが、好き過ぎるので全作品を簡単に紹介します。


作品

2008年リリースの1stで、まず「Popmonster」という名称が最高。

内容に目を向けると、1st Albumらしい粗雑な感じや初期衝動めいたヴァイブスからは距離を置き、じっくりと練り込まれたロックンロールサウンドを放出している印象です。

どの曲も口ずさみやすい感じの綺麗なメロディーで、それをオーセンティックなロックギターのツボを抑えたアレンジでラップしている一方、アンビエンスまで気配りの行き届いた雰囲気のアコースティックナンバーも手抜かりなく用意されていて聴き応えのある作品。

2009年リリースの2nd「PETE」は全7曲のボリュームで、1曲辺りの尺も短いためサクっと聞ける一枚です。GBVで感覚が麻痺しているけれど1曲2分前後ならまあ”短い”と表現できるはず。

ライブ映像で見られる楽曲もこのアルバムに収録されていることが多く、最初の一枚におすすめ。
というか別にこのアルバムに限らず、キャリア通してあまり大幅に音楽性を変えていないタイプの人なので、正直どれから聞いても大丈夫かと思われますが…。

2010年リリースの3rdが「Blue Ocean Sky」で、自分はこの作品から入りました。楽曲の作風としては割とバラエティー豊かなロックンロールが展開されていて、特にベッタベタなパターンに収まりきらない気の利いたビート面に関しては The Who や The Doors の参照が良い感じに効いていると思う。

1曲目の時点だと、譜割りと静・動を重視するタイプのポストハードコア文脈か??となり、少し身構えてしまうかもしれないけど、この曲が例外的なだけであとはいたって快適なポップソングが並んでいる。

Elliott Smith っぽい進行が素晴らしいTr.3から奥行きを感じさせるビート感のTr.4、そしてストレートなソングライティングに Beatles エッセンスを感じさせるアレンジが光るTr.5と矢継ぎ早に繰り出される楽曲群で自分の感情が完全にクリーンナップされてしまう。

2011年リリースの「Monster Suit」は少し性質の変わった作品で、Greg の自主制作による映像作品「GIANT MONSTER PLAYSET」のサウンドトラックとしての位置付けになっている。

英語アレルギーの方におかれましても、内容が簡潔で楽しみやすい作品なので是非

サントラなのでインスト楽曲も収録されているのだが、内容的には大体他の作品と同じようにポップなロックンロール・ナンバーを期待しておけば間違いない。
彼の作品中最もハードでヘヴィと思われるTr.1から、美しい進行・メロディーセンスのTr.2以降が並んでいる様子には思わず溜息が出てしまう。

2013年リリースの5th「Pop Motion Animation」は、Built to Spill を想起させる粘り気とうねりを活かしたギターが特徴的なTr.1から始まる、若干モダンなギターロック色の強い作品。こちらも最初の1枚におすすめかもしれない。

この作品に関しては国内の取扱店によるティザー映像が公開されているのだが、好意的に解釈しても広報として成功しているとは言い難いかもしれない…。(余談ですがこの映像、アーティスト写真が別の Greg Pope さんになっている気が…)

2015年リリースの6th「Fanboy」は、ライブ映像で演奏している曲も多く収録されていて、代表作的な位置としてイメージすると良いかもしれない。

表題曲の Lyric Video で、否応なくかっこいいためリピート必至です

Tr.1〜2の感じで、多少今までよりモダンに洗練されたか?といった印象を受けるも、Tr.3の表題曲で完全にロックンロール・キッズに退行してしまう。また、後半にも素敵なコード進行の曲が並んでいる(というか他の作品でも概してそうなのだが…)ため、聞き逃がせない一枚。

2016年にリリースされた7th「Guiding Star」では、Late 60s ~ 70s のラウドなロックの側面を少し抑えて、内省的な作風の割合が増えている。コード進行やメロディーセンス重視のSSW好きにおすすめなのは間違いなくこの作品。もちろんこれまでのポップセンスが炸裂したギターロック・ナンバーもぬかりなく収録されていて、密度の高い一枚に仕上がっている。

湿り気のある質感のアコースティックナンバーに大きな比重を割かれている辺りは、Last Days of April や Death Cab for Cutie などを”メロディーの良い洋楽”として愛聴している層にもウケそう。

一方で、本人自ら手掛けたティザー映像に関しては、その大胆過ぎるネタ使いがセンシティブな内容と良い塩梅の対比になっていて、「最高やな…」と全身感情になってしまうのであった。

先月リリースされたばかりの8thがこちら「A Few Seconds of Fame」。

まだ他の作品ほど聴き込めていないのだけど、かなり奔放でメロディーの良さとユーモアセンスに富んだ一枚という印象で、間違いなく最高です。

お約束の半音進行が鳴らされるTr.1の時点で「これだよこれ…」となったのも束の間、2以降の The Who や Queen を間接的に参照したと思われるお祭り感覚が顔を覗かせていて、前述バンドのようなロックンロール・オペラ感のある表現をお茶の間エンタメ的な温度感でセンス良く消化するとこうなるのだろうか…と思ってしまった、そもそも親子バンドだし。

また、リリースの度にギターアレンジの妙を見せつけられ感嘆する機会が増えており、特に今作でのエレキギターの演奏およびオケ構築にはやられた感がある。親父のお説教みたいなブルースロック調のリックにも、はたまたメロディーラインを神経質になぞるだけのシーケンスフレーズにも堕することのない絶妙なエレキギターのアレンジは一聴の価値があり、Built to Spill や Dinosaur Jr からGBVへ流れたものの、カレッジロック領域のエレキギターに分かりやすいかっこよさ・ダイナミクスの表現を発見できない難民の皆様におかれましても充分に楽しんでいただけるのでは…と思っている。

個人的なところでは、エフェクターで大仰に処理されることなくナチュラルにアンプで増幅されたエレキギターと、それを巧妙に配置したアンサンブルが最高なんだよな…という感じに浸っていて、思考停止しながらこれを書いています。


所感

活動規模や期間の割にかなり作品数が揃っている辺りも Robert Pollard を想起させられるのだが、GBVに対してこちらは1作品の密度が濃い印象を受ける(もちろん多数のポップソングを矢継ぎ早に並べる散発的なスタイルがGBVの好きな部分なのですが…)。

音源は SpotifyApple Music にも一通り揃ってます。Greg がソロ活動を始める前のバンドに関しても紹介したかったのだが、記事作成のカロリーが意外と高くて消耗したので今回は割愛します。

また、いくつかの作品は Greg のYoutubeチャンネルにもフル尺でアップロードされているので、インスタントに視聴したい方はそちらもおすすめ。他にもライブの様子やティザーの映像がアップされていて、最近のだと KISS みたいなコープスペイントで演奏する様子が見れて最高です。

自分にとってベストと呼べるミュージシャンの存在、これまでは Wilco だったり Supergrass だったり Crowded House だったりしたけど、Greg Pope の信頼感のある作風に完全にノックアウトされてしまい、あまり考える必要がなくなってしまったかもしれない。

つべこべ抜かさずストレートなロックンロールを楽しみたい(でも単に幼児退行しただけのものや、音に必然性の無いとっ散らかっただけのものは聞きたくない)みたいな人には特におすすめできそう。